April 28, 1990

THE STYLE OF BOSTON CLUB

僕らの”酒と音楽の日々”
ボストンクラブを飲りながら、正統派の音楽について語る。

キリン・シーグラムの正統派ウイスキー「新ボストンクラブ」は、新発売以来原酒100%の品質でコクを磨き、まろやかさを深め、飲み応えのある旨さと高級感あふれるパッケージで飲む人の心を酔わせている。
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品質にこだわる「新ボストンクラブ」のモダンクラッシック感覚にフィットするMFQ(モダン・フォーク・カルテット)のサウンドは、60年結成以来、常に暖かいハーモニーを基調とした正統派、大人のためのモダンフォークというべきものだ。彼らの歌う「ブルックリン・ガール」は正統派ウイスキー・新ボストンクラブのTV‐CFにも起用され、この4月には「ボストンクラブMFQジャパンツアー」と題した来日コンサートも行われた。
その正統派サウンドに魅せられ続ける大人のファンを中心に、多くの人を集めたコンサート会場。正統派ウイスキー・新ボストンクラブのグラスを片手に、MFQのハーモニーに耳をかたむけ『大人の至福の時間』に酔う人々の中にはミュージシャン・吉川忠英氏の姿も見られた。
今回は吉川氏と、その良き理解者、飲み仲間でもあるかまやつひろし氏お二人の、ウイスキーグラスを片手に熱のこもる音楽談義・人生談義をのぞいて見た。

吉川氏が先日コンサートを訪れたMFQの魅力を静かに、熱っぽく語りはじめた。
吉川 「MFQとの出会いは十数年前。低音部の艶のあるいい声をしているんだけど、変わった音の笛やギターを使ったり、実にこだわりがない。力が抜けていて自由なんです。彼らの音楽に、僕は初めから大人のフリーダムを感じた。とにかく出会って以来、ずっと魅了されてきた」
かまやつ 「MFQ結成当時の60年代には二つの流れがあって、当時から忠英さんはフォークムーブメントに、僕はブリティッシュ・ロックの方にいた。当時の影響って大きくて、あの頃のムーブメントをずっと忘れずに、今も趣味にしてる人は多いよね」
吉川 「僕も新しい音楽、今はやっているものとかは、あまり気になりませんよね」
かまやつ 「自分のトラッドを頑固に守っていくタイプと目新しいものが好きなタイプとがいて、僕は後者。好奇心が強くて、若い人のコンサートに乱入するのが趣味な程」
それぞれの生き方、音楽性を認め合いながらウイスキーグラスをかたむける両氏。音楽にとどまらず様々に広がる話題は、グラスを重ねるごとに、熱を帯びてくる。
かまやつ 「これまで試行錯誤はあったけど、最終的に自分が気持ちよくて、人も気持ちいい状況がベストだと。自分だけが気持ちいいっていうのはやめようと思うようになった。酒を飲む時もしかりで、気を使うというのじゃないけど、いっしょに飲んでる人も楽しんでくれないと自分も100%楽しくなれない。楽しくなければ酒を飲む意味もない。恩やは楽しい酒ですか、忠英さん(笑)」
吉川 「楽しいことはいい。いいものはいい、気持ちいいものはいい。そういう一番言い状態に自分を置いておくことが、僕らに大切なことだと思う。それでかな、最近酒の飲み方が変わって、地元でいつもの面々と飲ることが多くなった。いえで好きな音楽を聴きながら飲むことも多いですね。そして、やっぱり歌が好きなんだな。気持ちがいいと、ギター持って歌っちゃう」
かまやつ 「好奇心の強さって、人間自体への関心が強いってことだと思う。だから一緒に酒を飲みながら語り合う、人と飲む酒がやっぱり一番うまい酒だね」

表現方法は違っても、音楽に対する姿勢はともに『自分と人に気持ちいい』ものを目指す正統派。新ボストンクラブを飲みながら、音楽や生き方を語り合い、理解を深めていく両氏の姿にトラディショナルな『大人の至福の時間』の過ごし方を見た。

投稿者 Mika : 12:44 AM | コメント (0)

CD Jounal

すべての人々を同胞として愛したい
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MFQ(モダン・フォーク・クァルテット―現在は5人組だが)の名前が、日本にとどろいたのは、1963年にさかのぼる。その頃彼らのまわりの環境は、キングストン・トリオに代表されるフォーク・ミュージックの全盛期。MFQもフォークをやろうということで結集したんだそうだ。しかし、そのルーツは普通のフォーク・グループと少し違った。
「僕は協会でバッハのカンタータなどを歌っていたんだけど、ジェリーたちと出会ってもっとポピュラーな音楽、つまりフォークをやろうってことになったんだ。僕たちのやろうとしたことは当時アメリカでブームになっていた、ウエスト・コースト・ジャズを、サックスやトランペットじゃなく、僕たちの歌で作ろうというものだったんだ。だからMFQのはじまりは、フォー・フレッシュメンからのゾクゾクするような影響にあると言ってもいいね」グループのメンバーの一人、ヘンリーが教えてくれた。しかし、MFQはメジャーの成功を収めることなく解散、70年代に一度再結成したものの、また解散だから、現在のMFQは3世代目にあたる。ヘンリーは「最初のうちはフォークでよかったんだけど、ビートルズや他のロックンロールがエレクトリックなものをシーンにもらたして、僕たちもフォーク・ロックをやろうとしたんだ。事実、フィル・スペクターと一緒にアルバムを作ったんだけど、リリースされず、意気消沈して解散。再結成した時も久しぶりに昔の仲間が集まって、またやろうってことになったけど、世はディスコ時代。僕たちはお呼びじゃなかったってやつ。今回のMFQは、日本をはじめとしたいくつかのマーケットの要請というところかな」と言って笑う。
実際、彼らは現在の活動を心の底から楽しんでいるようだ。時代の欲求はまたひとめぐりして彼らに向いている。でも、今、何故MFQなのか?その答えは彼ら自身がしっかりと持っている。中心人物のジェリーは語る。
「ひとめぐりしたと言っても、そんなに単純なものじゃない。25年の間に人々の指向は多様化したし、人口も4倍近くに増え、それだけ方向性も増えている。しかもメディアが発達して、我々と人々とのコミュニケーションが楽になった事も一つの要因だ」「更に」とヘンリーが続ける。「ヘヴィ・メタルやラップの音楽が生まれ、ラジオがそれを流している内に、人々はメロディと出会いが少なかったと思うんだ。だから今、ウェイブ・ステーションや、ウィンダムなど、「いいメロディ」を人々が求めているんじゃないかな。そういう背景でトレイシー・チャップマンなんかも生まれたんだと思う」彼らは、言ってみればフラワー・チルドレンなわけだが、そんな彼らにとって、トレイシーをはじめとするフォークの新しいアーティストは、どのように写っているのだろう。ジェリーに聞く。
「トレイシーなどのアーティストは、音楽的なところ以外に重要なポイントがあるんだ。それはプロテストということ。我々はラヴ・ジェネレーションだから、60年代は戦争に反対した。それが反体制のメッセージになった。でも今は、危機はもっと大きなところにある。我々は地球人として、同じところに位置してるはずだよ。国家やイデオロギーや民族などにこだわっていては、やがて我々の母体である地球が病んでしまう。だから彼らは地球を危機に陥れる総てのものにアンチ・メッセージを投げかけているのさ。その意味では我々とまったく同じだね」

音楽を作り出す上で一番大切なこと。それは“愛”であり“心”なんだということを、あらためて感じさせてくれたMFQ。コンサートでも会場全体を大きな愛で包んでくれたし、アルバムからもその愛は感じ取れる。「すべての人々を同胞として愛したい」という彼らの姿勢には、嫌味なところも全くなく、25年の間に大地にしっかりと根ざした、大きな愛があった。それがMFQの音楽なのだった。

CDジャーナルより転載  聞き手−村上太一

投稿者 Mika : 12:40 AM | コメント (0)